この記事は末代アドベントカレンダー2020の3日目の記事です。
昨日はvaltam78氏でした。
あらまし
ハードオフにてこんなものを見つけました。
わたしはジャンク漁りが趣味なこともあり、ハードウェアとかガジェットとか大抵のものはちょっと触ってみればどのような物で何に使うのか程度ならだいたい理解できると自負してるんですが、これは何なのか、どう使うのか一切の詳細がわからない。
ひっくり返してみると単3電池の2本入る蓋がありますが、型番もなにも書かれておらず、検索することもできない。
手掛かりになりそうなのは上面にプリントされた文言のみ。
「おまかせください、価値あるネットワーク」
「Yes!VeteRUN」
「NTTの専用サービス」
しかしこれも検索に引っ掛かりません。
VeteRUNで検索しても驚くほど情報が出てこないのです。
日本全国の電話回線を一手に握る巨大企業であるNTT。
それほど有名な組織が、専用デバイスを作るほど力を入れて運営していたサービスなのに、インターネットに情報が一切ない。
このミステリアスな状況にわたしは強く心を惹かれました。
なお、この時点でわたしがデバイスを見て得られたのは以下の情報。
・NTTと書いてあることから、これはネットワーク関連の機器である
・VeteRUNサービスなる印刷があるので、この機器は当然VeteRUNサービスと連携して使用するものである
・アンテナとスピーカー穴、それにボリューム調整ダイヤルがあることから、これは電波を受け取って音を出す機器である
このことから、PC側に電波送信器を接続し、ネットワークとの接続になんらかの変化が起きると音を鳴らすアラーム装置の子機ではないかと思っていました。
アンテナの風貌が、昔レゴのカタログで見た8482 CyberMasterに似ていたこともあると思います(PCに送信機を接続してロボットブロックと通信できる初期のマインドストームです)。
正体判明
ここまでは外出先のハードオフでスマホ片手に考えたことでした。
家に帰ってからもどうしても気になったので、本腰入れて検索してみることに。
その結果、デバイス自体の正体は判明。
なんとラジオでした。
Mark Feldstein&Associatesが製造したモデル91022とのこと。
確かReset Pause Scan Startで検索したらヒットしたんだと思います。今検索してもヒットしないので再現性がないな。
デバイスの正体がわかったので一件落着、とはいきません。
ラジオという汎用品に印刷されているということは、これはVeteRUNサービスのノベルティグッズのようなものだったのでしょう。
つまりNTTは、わざわざ金をかけてグッズを作るほどに力を入れてVeteRUNサービスを宣伝していたと推測されます。
ではなぜそれほどのサービスの情報が、ほんの20年やそこらで完全に消滅してしまったのか?
個人ブログやニュースサイトの情報がないばかりか、提供者であったNTT自身も過去のサービス一覧などに何故その存在を載せず、風化して消えるがままにしているのか?
ますます興味が湧いてきます。
NTT技術ジャーナル
「Yes!VeteRUN NTT」で検索して、唯一ヒットしたのがこれです。
NTT技術ジャーナル、1997年5月号の国立国会図書館アーカイブ。
VeteRUN活動からYes!VeteRUN活動へ / 伊佐治正隆 ; ほか / p12~14 (0007.jp2)
さてではこれを読んでみようとすると、
……orz
NTT技術ジャーナルというのはNTTグループから発行される総合技術誌であり、一般人であっても購読できるようです。
しかし公式アーカイブにある最古のものは2003年1月号で、それ以前のものは存在しません。
NTT技術ジャーナル|バックナンバー
さて困った。
もう少し掘り下げてみると、NTT技術ジャーナルに当該記事を寄稿した伊佐治正隆氏は、監査役まで登り詰めたあと、2018年6月にNTT西日本を退任しておられるようです。
NTT西日本 | 異動ニュース
監査役といえば社長の次に強いといわれるほどの権力者。
つまり30年前の1997年時点でも出世コースに乗っており、それなりの権力があったと考えられます。
そのような人が関わっていたプロジェクトであれば、ある程度自由に資金が動かせて、結果ノベルティグッズが作られたと考えるのは自然なような気がします。
しかし肝心のVeteRUNが何なのかはわからない。
困った時の神頼み
ここまでの経緯をMastodonで垂れ流していたところ、ソロモン72柱の一柱であるおるみんさんが助け舟を出してくれました。
専用線、つまり顧客の事業所など同士に専用の通信線を引く通信サービスのことですね。
輻輳や盗聴に強いが、物理的に専門の回線回線を作るため非常に高額なことが特徴です。
最近ではVPNの説明によく出てくるやつです。
インターネット黎明期は大手プロバイダも様々なサービスを乱立させていた、それこそそのうちのいくつかが完全に忘れ去られてもおかしくないくらいに、と。
わたしはインターネット黎明期の事情などまったく知らなかったのでこれは大いに助けになりました。
ストーリーとしてもかなり頷ける話です。
国立国会図書館
しかし正解を書いた資料があるなら、読みたくなるのがオタクというもの。
はい。遠隔複写サービスを申し込んでしまいました。
完全に勢いです。自動返信メールが来るのめっちゃ速かった。いいサーバ使ってますね……。
申し込み手順としては、アカウントを作って必要な資料の必要なページを指定して、サイズを指定して……と民間サービスとそう変わらない流れでした。
UIもユーザーフレンドリーで見やすく、手順フローの分かりやすい良いものでした。
なら料金の支払いももちろんクレカで……と思いきや、複写した資料に同封される支払用紙でコンビニ、ATM、銀行振込などをするようです。
そのへんはお役所らしい。
現物
せっかくなので買ってきてしまいました。
ジャンク扱いなので税込み330円。
ボロボロのままにしておくのも可哀想なので修理してやりましょう。
値札シールを剥いで残った接着剤と汚れをアルコールで拭きます。
印刷まで消えないか不安でしたが大丈夫でした。
ネジはゴム足の下に隠れているタイプです。
中身。思ったよりホコリが侵入していないので、軽く拭く程度に留めます。
うっかり配線切ったり抵抗もいだりしたら嫌だし……
LogicoolのG602と並べてみるとこんな感じ。
縦横の寸法は似たような感じですが、高さが1センチ近く高いのでマウスのように持つとだいぶ大きく感じます。
動かしてみるとこう。
Scanボタン長押しで電波スキャン、Resetボタンで周波数帯を最初から再スキャン……なのかな?
自動スキャン式のラジオを触ったことがないので間違っているかも。
とりあえず数局聞くことができました。
複写資料到着
さて、お待ちかねのオチです。
申し込んでほぼ2週間、バカでかい封筒が届きました。
いやまあ、元の雑誌のサイズがA4なので、それを見開き一枚コピーするとA3になるのは当たり前なんですが、折らずにそのまま届けてくれるのは想定外でした。
なお見開き2ページをモノクロコピーして料金は送料込みで528円でした。
銀行振り込みでサクっと支払い。インターネットバンキング便利です。
さて、では内容を見ていきましょう。
とはいっても複写物の著作権は原本と同様著作権者にあるようで、あんまりこういうオープンなところでまるまる写真に撮ってバーン!はよろしくない気がするため、内容の抜粋に留めます。
見出し1:お客様の需要動向を踏まえた販売チャネルの変化
1994年から96年上半期にかけてディジタル(原文ママ)専用線サービスの契約回線数が急増しており、今後とも伸びていくであろうため、販売システムの強化が大事であるという内容です。
利用種別としてはデータ通信7割、インターネット2割くらいの比率であるというのがなんとも時代を感じさせます。
見出し2:VeteRUN活動からYes!VeteRUN活動へ
そら来た!
内容を簡潔にまとめると、
・専用線サービスに対するユーザの品質要求は高い
・追随してくる同業他社に対して、料金面での差別化は難しい
・そのため、92年度からNTTの専用サービス部門は「VeteRUN活動」と銘打った経営改革活動を行っている
・活動内容としては、料金・サービス戦略、品質向上、コスト削減などの経営的課題に取り組むもの
・95年にこれを改訂し、CS(顧客満足)向上に傾注したものとして新たに「Yes!VeteRUN活動」と改名
Yes!VeteRUNは顧客に提供される商品サービスそのものではなく、社内活動の名称だったんですね。
確かにNTT社内で行われたクローズな活動であれば、一般にその名称が流通しないのも、インターネットに情報が残っていないのも納得できます。
しかし社内活動でなぜラジオが?となったのですが、その答えが次の章にありました。
見出し3:具体的なYes!VeteRUN活動の内容
内容のまとめとして、
・Yes!VeteRUN活動は、納期および回答納期の短縮、工事プロセスサービスの実施、故障プロセスサービスの実施の3つを目的としたものである
・目標値を定めPDCAを回す、テレマーケティングによるCS調査、販売店の順位付けなどの体系的仕組み作りを行う
ほうほう。
・これに加え、社員への活動意識浸透のため、「Yes!VeteRUN手帳」「専用サービスの行動指針」「CS標語カレンダー」などの作成、配布を行う
これだーーー!
ラジオを配ったとは直接書いていませんが、上記三種以外作ってないとも書いてないので、まずこれでしょう。
社員の意識啓発のために作られ、NTT内部でのみ流通したグッズだったんですね。
そりゃあ社内守秘義務や、97年というインターネットになんでもかんでも書く時代ではなかったことも相まって、表に出てこないはずです。
標語カレンダーとか行動指針ポスターとかはあれのノリですね、工場や倉庫内に5SとかKY活動とか貼ってあるやつ。
しかし、手帳やカレンダーは仕事で使ったり社内デスクに置いたりできるんでしょうが、ラジオって会社内でどう使うんだろう。
97年くらいだとラジオをBGMに鳴らしながら仕事するようなのが許容されてたんでしょうか。
というか現在でもそういう文化のある会社は一般的なのかな?デスクワークしたことがないので分からない。
それとも家に持ち帰ってラジオを聞くたびに仕事の行動指針を目にすることになるんでしょうか。精神病みそう。
そりゃあハードオフに売りたくもなるかな……
まとめ
ハードオフのジャンク棚で出会った謎デバイスから思わぬ長い調査が始まってしまいました。
これだからジャンク漁りはやめられない。
また自分語りになりますが、わたしはソ連のように、既に滅びたもの、現存しないものについて調べるのって好きなんですよね。
既にそれに関わっている人間がいないわけだから、ほどよく社会感が削ぎ落されてよい。
逆に現在存在するもの、現役で使われているものなんかは関わっている人間の思想や利害が見えてきて気分が悪いというか。
そういったゴタゴタがすべて終わったあとに残骸を棒でつついて経緯を推測するのが好きです。
「メーデー」とかの事故経緯調査パートに近いものがあるかもしれない。
また今回初めて国立国会図書館の資料取り寄せ(遠隔複写)を利用したんですが、思った以上にユーザーフレンドリーな感じでよかったです。
市役所での書類提出とかマイナンバー登録とか必要なもんだと思ってた。
資料取り寄せ528円、オブジェクト購入330円と合計1000円以下でめちゃくちゃ楽しめました。
またこんな謎デバイスに出会えることを願いつつ、明日はアドカレの作成者でもある8号さんです。えらいっ!
おまけ
今回ご協力いただいたおるみんさんですが、その御名を冠したサークル「おるみん党」から発行された同人誌がなんと国立国会図書館に収蔵されています。
みんなも国立国会図書館へ行ったり取り寄せたりして読もう!(A4白黒1枚25円とかなので全ページ複写するとすごい料金になりそうですが……
昨日はvaltam78氏でした。
あらまし
ハードオフにてこんなものを見つけました。
わたしはジャンク漁りが趣味なこともあり、ハードウェアとかガジェットとか大抵のものはちょっと触ってみればどのような物で何に使うのか程度ならだいたい理解できると自負してるんですが、これは何なのか、どう使うのか一切の詳細がわからない。
ひっくり返してみると単3電池の2本入る蓋がありますが、型番もなにも書かれておらず、検索することもできない。
手掛かりになりそうなのは上面にプリントされた文言のみ。
「おまかせください、価値あるネットワーク」
「Yes!VeteRUN」
「NTTの専用サービス」
しかしこれも検索に引っ掛かりません。
VeteRUNで検索しても驚くほど情報が出てこないのです。
日本全国の電話回線を一手に握る巨大企業であるNTT。
それほど有名な組織が、専用デバイスを作るほど力を入れて運営していたサービスなのに、インターネットに情報が一切ない。
このミステリアスな状況にわたしは強く心を惹かれました。
なお、この時点でわたしがデバイスを見て得られたのは以下の情報。
・NTTと書いてあることから、これはネットワーク関連の機器である
・VeteRUNサービスなる印刷があるので、この機器は当然VeteRUNサービスと連携して使用するものである
・アンテナとスピーカー穴、それにボリューム調整ダイヤルがあることから、これは電波を受け取って音を出す機器である
このことから、PC側に電波送信器を接続し、ネットワークとの接続になんらかの変化が起きると音を鳴らすアラーム装置の子機ではないかと思っていました。
アンテナの風貌が、昔レゴのカタログで見た8482 CyberMasterに似ていたこともあると思います(PCに送信機を接続してロボットブロックと通信できる初期のマインドストームです)。
正体判明
ここまでは外出先のハードオフでスマホ片手に考えたことでした。
家に帰ってからもどうしても気になったので、本腰入れて検索してみることに。
その結果、デバイス自体の正体は判明。
なんとラジオでした。
Mark Feldstein&Associatesが製造したモデル91022とのこと。
確かReset Pause Scan Startで検索したらヒットしたんだと思います。今検索してもヒットしないので再現性がないな。
デバイスの正体がわかったので一件落着、とはいきません。
ラジオという汎用品に印刷されているということは、これはVeteRUNサービスのノベルティグッズのようなものだったのでしょう。
つまりNTTは、わざわざ金をかけてグッズを作るほどに力を入れてVeteRUNサービスを宣伝していたと推測されます。
ではなぜそれほどのサービスの情報が、ほんの20年やそこらで完全に消滅してしまったのか?
個人ブログやニュースサイトの情報がないばかりか、提供者であったNTT自身も過去のサービス一覧などに何故その存在を載せず、風化して消えるがままにしているのか?
ますます興味が湧いてきます。
NTT技術ジャーナル
「Yes!VeteRUN NTT」で検索して、唯一ヒットしたのがこれです。
NTT技術ジャーナル、1997年5月号の国立国会図書館アーカイブ。
VeteRUN活動からYes!VeteRUN活動へ / 伊佐治正隆 ; ほか / p12~14 (0007.jp2)
さてではこれを読んでみようとすると、
……orz
NTT技術ジャーナルというのはNTTグループから発行される総合技術誌であり、一般人であっても購読できるようです。
しかし公式アーカイブにある最古のものは2003年1月号で、それ以前のものは存在しません。
NTT技術ジャーナル|バックナンバー
さて困った。
もう少し掘り下げてみると、NTT技術ジャーナルに当該記事を寄稿した伊佐治正隆氏は、監査役まで登り詰めたあと、2018年6月にNTT西日本を退任しておられるようです。
NTT西日本 | 異動ニュース
監査役といえば社長の次に強いといわれるほどの権力者。
つまり30年前の1997年時点でも出世コースに乗っており、それなりの権力があったと考えられます。
そのような人が関わっていたプロジェクトであれば、ある程度自由に資金が動かせて、結果ノベルティグッズが作られたと考えるのは自然なような気がします。
しかし肝心のVeteRUNが何なのかはわからない。
困った時の神頼み
ここまでの経緯をMastodonで垂れ流していたところ、
専用線、つまり顧客の事業所など同士に専用の通信線を引く通信サービスのことですね。
輻輳や盗聴に強いが、物理的に専門の回線回線を作るため非常に高額なことが特徴です。
最近ではVPNの説明によく出てくるやつです。
インターネット黎明期は大手プロバイダも様々なサービスを乱立させていた、それこそそのうちのいくつかが完全に忘れ去られてもおかしくないくらいに、と。
わたしはインターネット黎明期の事情などまったく知らなかったのでこれは大いに助けになりました。
ストーリーとしてもかなり頷ける話です。
国立国会図書館
しかし正解を書いた資料があるなら、読みたくなるのがオタクというもの。
はい。遠隔複写サービスを申し込んでしまいました。
完全に勢いです。自動返信メールが来るのめっちゃ速かった。いいサーバ使ってますね……。
申し込み手順としては、アカウントを作って必要な資料の必要なページを指定して、サイズを指定して……と民間サービスとそう変わらない流れでした。
UIもユーザーフレンドリーで見やすく、手順フローの分かりやすい良いものでした。
なら料金の支払いももちろんクレカで……と思いきや、複写した資料に同封される支払用紙でコンビニ、ATM、銀行振込などをするようです。
そのへんはお役所らしい。
現物
せっかくなので買ってきてしまいました。
ジャンク扱いなので税込み330円。
ボロボロのままにしておくのも可哀想なので修理してやりましょう。
値札シールを剥いで残った接着剤と汚れをアルコールで拭きます。
印刷まで消えないか不安でしたが大丈夫でした。
ネジはゴム足の下に隠れているタイプです。
中身。思ったよりホコリが侵入していないので、軽く拭く程度に留めます。
うっかり配線切ったり抵抗もいだりしたら嫌だし……
LogicoolのG602と並べてみるとこんな感じ。
縦横の寸法は似たような感じですが、高さが1センチ近く高いのでマウスのように持つとだいぶ大きく感じます。
動かしてみるとこう。
Scanボタン長押しで電波スキャン、Resetボタンで周波数帯を最初から再スキャン……なのかな?
自動スキャン式のラジオを触ったことがないので間違っているかも。
とりあえず数局聞くことができました。
複写資料到着
さて、お待ちかねのオチです。
申し込んでほぼ2週間、バカでかい封筒が届きました。
いやまあ、元の雑誌のサイズがA4なので、それを見開き一枚コピーするとA3になるのは当たり前なんですが、折らずにそのまま届けてくれるのは想定外でした。
なお見開き2ページをモノクロコピーして料金は送料込みで528円でした。
銀行振り込みでサクっと支払い。インターネットバンキング便利です。
さて、では内容を見ていきましょう。
とはいっても複写物の著作権は原本と同様著作権者にあるようで、あんまりこういうオープンなところでまるまる写真に撮ってバーン!はよろしくない気がするため、内容の抜粋に留めます。
見出し1:お客様の需要動向を踏まえた販売チャネルの変化
1994年から96年上半期にかけてディジタル(原文ママ)専用線サービスの契約回線数が急増しており、今後とも伸びていくであろうため、販売システムの強化が大事であるという内容です。
利用種別としてはデータ通信7割、インターネット2割くらいの比率であるというのがなんとも時代を感じさせます。
見出し2:VeteRUN活動からYes!VeteRUN活動へ
そら来た!
内容を簡潔にまとめると、
・専用線サービスに対するユーザの品質要求は高い
・追随してくる同業他社に対して、料金面での差別化は難しい
・そのため、92年度からNTTの専用サービス部門は「VeteRUN活動」と銘打った経営改革活動を行っている
・活動内容としては、料金・サービス戦略、品質向上、コスト削減などの経営的課題に取り組むもの
・95年にこれを改訂し、CS(顧客満足)向上に傾注したものとして新たに「Yes!VeteRUN活動」と改名
Yes!VeteRUNは顧客に提供される商品サービスそのものではなく、社内活動の名称だったんですね。
確かにNTT社内で行われたクローズな活動であれば、一般にその名称が流通しないのも、インターネットに情報が残っていないのも納得できます。
しかし社内活動でなぜラジオが?となったのですが、その答えが次の章にありました。
見出し3:具体的なYes!VeteRUN活動の内容
内容のまとめとして、
・Yes!VeteRUN活動は、納期および回答納期の短縮、工事プロセスサービスの実施、故障プロセスサービスの実施の3つを目的としたものである
・目標値を定めPDCAを回す、テレマーケティングによるCS調査、販売店の順位付けなどの体系的仕組み作りを行う
ほうほう。
・これに加え、社員への活動意識浸透のため、「Yes!VeteRUN手帳」「専用サービスの行動指針」「CS標語カレンダー」などの作成、配布を行う
これだーーー!
ラジオを配ったとは直接書いていませんが、上記三種以外作ってないとも書いてないので、まずこれでしょう。
社員の意識啓発のために作られ、NTT内部でのみ流通したグッズだったんですね。
そりゃあ社内守秘義務や、97年というインターネットになんでもかんでも書く時代ではなかったことも相まって、表に出てこないはずです。
標語カレンダーとか行動指針ポスターとかはあれのノリですね、工場や倉庫内に5SとかKY活動とか貼ってあるやつ。
しかし、手帳やカレンダーは仕事で使ったり社内デスクに置いたりできるんでしょうが、ラジオって会社内でどう使うんだろう。
97年くらいだとラジオをBGMに鳴らしながら仕事するようなのが許容されてたんでしょうか。
というか現在でもそういう文化のある会社は一般的なのかな?デスクワークしたことがないので分からない。
それとも家に持ち帰ってラジオを聞くたびに仕事の行動指針を目にすることになるんでしょうか。精神病みそう。
そりゃあハードオフに売りたくもなるかな……
まとめ
ハードオフのジャンク棚で出会った謎デバイスから思わぬ長い調査が始まってしまいました。
これだからジャンク漁りはやめられない。
また自分語りになりますが、わたしはソ連のように、既に滅びたもの、現存しないものについて調べるのって好きなんですよね。
既にそれに関わっている人間がいないわけだから、ほどよく社会感が削ぎ落されてよい。
逆に現在存在するもの、現役で使われているものなんかは関わっている人間の思想や利害が見えてきて気分が悪いというか。
そういったゴタゴタがすべて終わったあとに残骸を棒でつついて経緯を推測するのが好きです。
「メーデー」とかの事故経緯調査パートに近いものがあるかもしれない。
また今回初めて国立国会図書館の資料取り寄せ(遠隔複写)を利用したんですが、思った以上にユーザーフレンドリーな感じでよかったです。
市役所での書類提出とかマイナンバー登録とか必要なもんだと思ってた。
資料取り寄せ528円、オブジェクト購入330円と合計1000円以下でめちゃくちゃ楽しめました。
またこんな謎デバイスに出会えることを願いつつ、明日はアドカレの作成者でもある8号さんです。えらいっ!
おまけ
今回ご協力いただいたおるみんさんですが、その御名を冠したサークル「おるみん党」から発行された同人誌がなんと国立国会図書館に収蔵されています。
みんなも国立国会図書館へ行ったり取り寄せたりして読もう!(A4白黒1枚25円とかなので全ページ複写するとすごい料金になりそうですが……
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